80年代から90年代にかけて、日本の産業が世界に放った威光も、今は昔。
この産業の衰退の理由を単なる「戦略ミス」ではなく、
企業の心の病だ、という一人の官僚がいる。
社員に独創的な取り組みを許さない組織の縛りが、
消費者にとって、ワクワクするような驚き、新しい発見の芽を紡ぎとっている、というのだ。
こういった議論によく登場するのが、アップルだ。
日本の技術力で、アップルの製品を開発することはできただろう。
しかし、決して、アイデアは生まれなかったはずだ、と彼は言う。
アップルが次々に新しい製品を世に生み出した根幹には、ジョブズ氏の夢が形になっていったことにある。
そして、彼の夢を実現させるバックアップが、組織の体制にあったからだろう。
彼の独創的な夢は、見方を変えれば、私的な願望かもしれない。
しかし、その私的な願望や、欲求、懐疑心から、多くのアイデアは生まれる。
形のない材料から、手足と想像力を駆使して、人間とって価値ある何かを生み出す行為。
それこそが、モノづくりの原点だ。
これは、単に製造業に限った話ではない。
自身が属する建築の分野しかり、医療の分野しかり、芸術の分野しかり。
「公私混同」というと、組織にとっては、悪の意味で用いられる。
けれど、「私」の自由な発想やアイデア、時として突発的なひらめきが、ワクワクする驚きを人に与えるのであり、人に感動を与えるものを生む。
今、もう一度、モノづくりの原点に戻ろう。
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