究極の狭小住宅ーポーランドから見える歴史ー

 

狭小住宅といえば、デザイン雑誌に登場するような、ちょっと小洒落たデザイナーズ住宅を連想する。

余分なものを削ぎ落とし、ストイックで先鋭的。

日本、こと首都圏の密集した地域で、それこそ猫の額ほどの土地に、

デザイナーと呼ばれる類の建築家が、彼らの感性を終結し、いかにも「どうだ!」といった趣さえ漂う。

 

少し前の話だが、昨年末に東欧ポーランドにおいて、世界一狭い住宅が誕生し、ちょっとした話題を呼んだ。

写真:CENTRALA
写真:CENTRALA

最も狭い部分で幅92センチ。

それでも、キッチン、浴室、トイレなどの住宅設備は完備されている。

もちろんベッドも書斎もある。

建築主自らここに住むらしいが、作家などの芸術活動家にも利用してもらいたいと願っているそうだ。

中は意外と明るい

写真:CENTRALA
写真:CENTRALA

 

単なる狭小住宅ということならば、「ふーん、すごいね」で終わってしまうところだが、

建築主が、この狭い路地裏のような土地を選んだのは、別の理由もあった。

 

ここは、かつてゲットー(ユダヤ人隔離居住地)だった。

そして彼の母親が、ナチス・ドイツから逃れ生き延びた場所。

彼は、その悲しい歴史の隙間を埋める願いを込めてここを選んだ。

 

そういった背景をみると、この狭小住宅に、当初のユダヤ人達の、悲惨な生活が重なって映る。

もちろん、こんな明るい室内ではなかったろう。

表から、住宅と気づかれないよう、そして隠し部屋のような場所を棲家として、

それこそ、人間の生活とはいえない、動物が「生息する」場所で、ただ日々の恐怖に怯えながら命を繋いでいた情景が浮かび上がる。

 

戦争とは、なんて無惨なものだろう。

この世で、人間が行う最も愚かな行為だ。

 

建築主の願いが、未来に続いてほしいと願う。

 

 

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