不動産資産価値の底上げ予兆ー老朽化に本腰を入れ始めた国交省

 

住宅という資産を手に入れるとき、戸建てがいいかマンションがいいか、という話がある。

自宅として自ら住むという場合、結論としては自分の好きな方を選べばそれでいい、というのが持論。

結局のところ、戸建てにしろ、マンションにしろ、どちらも一長一短あるわけで、それを個々のライフスタイルも違えば、好みも価値観も違うのに、杓子定規で計れるわけないでしょ、と思うわけ。

それぞれにメリット、デメリットがあるのだが、ここに来て、その尺度が変わるかもしれない動きが起こっている。

それは、もしかすると、国全体の不動産資産価値が将来的にグッと底上げされるかも知れないことを思わせる。

 

マンションというものは、知っての通り、区分所有。各住戸専用部分と、区分所有者が共有して持つ共用部分からなるものだ。

基本的に、室内部以外は全て共有資産。

敷地も然り、建物の構造体からエントランス周りから廊下、エレベータ、各設備、部屋の中以外は、ほとんど共用部分と言っていい。

 

なわけで、ちょっと古くなったから直そうか、と思っても、個人で勝手にできるものではない。

みんなの共有のものなので、皆が合意しないとだめ。

戸建てと違って、建物の外観や構造体などに個人が勝手に手を加えられないところが、マンションの制約の大きいところだ。

ま、管理会社にお任せして気楽でいい、という見方もあるが。。

 

幸か不幸か、そうした制約が、老朽マンションのスラム化を増加させている。

ボロボロのまま放置され、旧耐震基準時代の耐震性の低い状態で耐震補強も施されないまま、ただ崩壊を待つのみ。住人は次々と周辺の新しいマンションに住み替え、どんどん空室が増えるというスパイラルに陥っている。

残った住人は、賃借人だったり、とりあえず雨風凌げればそれでいい、というその建物の資産価値など全くあてにもしていないような人たち。

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そうしたマンションを建替えるには、区分所有者全員の同意が必要。

戸建てのように、オイソレと建替えができるものではなく、実質、一旦マンションを購入してしまったら、建替えはほぼ不可能だ。

そもそも、空室の目立つ老朽マンションでは、資金の元となる修繕積立金も底をついているケースが多い。まさに死を待つのみの状態なのだが、それは単にその建物だけでなく、災害時には地域全体に多大な危険を及ぼす恐れもある。

 

そういった状況を鑑み、古いマンションの解体や売却に、所有者全員ではなく、8割程度の合意でできるようにする緩和措置が検討されている。

対象は1981年以前の旧耐震基準のマンションに限定されるようだが、住民が住み替えやすくするように、引っ越し代などの助成をしたり、容積率の緩和などで土地の資産価値を高めたりすることが検討されている。

 

意図的に土地の資産価値を操作することにいささか疑問はあるものの、それでも高く売却できるとならば、住民も住み替えがしやすく、老朽マンションが減って地域の防災的観点からも有効な手だてと言えるだろう。

 

同じことが、地方のオフィスビルや商業ビルにも起きており、国交省が地銀と組んで、官民ファンドを立ち上げ、古ビルの改修や建替えを促そうとしている。

現在、西日本シティ、北国、福岡、十八、長崎、常陽の各地銀が先行有力候補となっているが、年内に20行以上と提携することを目論んでいる。

 

風が吹けば桶屋が儲かるではないが、不動産の二極化が進むなかで、建替えや改修をしやすくするこうした動きは、不動産の価値を高め、市場の底上げ効果が期待できるとともに、建設業にとっても、活況の風が吹くことが予想される。

 

よっしゃ、また一丁出番ですかい!とねじり鉢巻のおやっさんがたくましく働く姿は、元気な日本の象徴であると思う一方、どこぞの国の地方都市のように、金の亡者が見境なく開発を進めるあまりに住民の生活そのものを破壊するような、愚かな方向へ進むことがないことを願ってやまない。

 

 

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