超高層建築で火事起きたらどう逃げる?

 

まーなんて不合理なんだろうと、建築の世界におきましては、(もっともらしい)理由あって決められているものが多く存在する。

不合理の理由は、言わば、日本の縦割り官僚制度に起因していることがほとんどですけど、それをどうのこうの、(言いたい気持ちはあるけれど)とりあえず、ここでは置いときます。

近年、特に都心では、雨後の筍のように高層建築がニョキニョキ姿を現しておりますけれど、商業建築や事務所ビル、タワーマンションに留まらず、病院までもが高層化を始めております。

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「はしご車が届かない高層建築は災害時にはどうなるの?」と、時々素朴な疑問を頂きますが、はしご車が届かない(原則として31mを超える高さ)建築物には、非常用エレベータの設置が義務づけられておりまして、自家発電装置を備え、停電しても運転できる仕組みになっております。

おー、そうかそうか、じゃあ、何十階という高さの階段を延々と歩いて下りなくていいのね、と安堵したいところだが、残念ながらそうではない。

非常用エレベータというのは、非常時に消防隊員が消火及び救出作業の為に使用するものであって、建物内にいる人が避難の為に使用できるものではない。

なので、死にたくなかったらブツブツ不平を言う前に、さっさと階段で下りてください。

 

しかし、そうは言っても、皆が皆、何メートルもの高さを一気に下りるほど健常であるとは限らない。特に病院なんかじゃ、車いすの人だっているだろうし、寝たきりの病人だっているはずだ。

じゃ、彼らはどうするのか。

実際は、水平移動でより安全な場所にて一時待機。外部からの救助隊が来るのを待って避難するという対応がなされているようだ。

驚くべきことかもしれないが、今までこうした介助を必要とする人の避難については、事故が起きながらも課題が残されたままだった。

 

ようやく消防庁が動いたのが、非常用エレベータの避難解禁。

この新しい指導基準が、今回初めて、先月開業した東京・本郷の順天堂医院(地下3階・地上21階)で取り入れられた。

「初めて」というところに、少々衝撃を受けるのだが、いかに日本においてユニバーサルデザインが遅れているかを物語っている。

 

車いすを使用する人たちの中には、垂直移動の手段さえあれば、自力で避難できる人もいるだろう。また、健常者ほどではなくとも、介助器具を利用してエレベータまでたどり着ければ、避難できる人だっている。

一刻一秒を争う災害時に、垂直移動ができないために、ただ外部からの救助を待っているだけというは、何とも不合理極まりない。

 

この新しい指導基準の認可には、平面プランなどいろいろ条件があって、今回は病院が第一号認可となりましたけど、そもそも、消防庁の(国交省もですけど)「バリアフリー」という考え方自体が、身障者にとっての「バリア」=「障壁」をなくすという、なんというか、健常者側から見た、彼らを特別視する上から目線的な考え方が、根本的に違うでしょ、と思うわけです。

どんな人も平等に、同じように使える、同じように利用できる、同じように暮らせる、何の疑いもなく。

そうした普遍性が、建築には求められるべきである。

日本の建築は、世界的に優れていると言われますけど、悲しいかな、ユニバーサルという視点が著しく欠如していると思う今日この頃…でアリマス。

 

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