200年後も変わらぬ姿で存在する建築が当たり前となる時代

 

おお、これは!

物質・材料研究機構の西村氏のこの開発

ふーん、へー、凄いね、とサラリと流されるべくものではないことは、建築人なら感じたに違いない。

簡単に言うと、200年は老朽化しない鉄筋コンクリートが作れると言うことなんですけど、まず、鉄筋コンクリートの老朽化という話から始めよう。

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鉄筋コンクリートの老朽化とは、別の言い方をすればコンクリートの中性化。単にひび割れてるとか、そういうのとは違う。コンクリートは周知の通り、セメントが主原料ですから、アルカリ性。しかし、小さなひび割れや孔から雨水等が浸透して、内部のアルカリ性分(セメント成分)が抜け出してしまうと、次第に中性に近づく。

 

で、これ自体はどうってことないが、問題は中の鉄筋。鉄筋はアルカリ性のコンクリートで覆われているから酸化せず錆びない。が、コンクリートがアルカリ性から酸性に近づく(中性化)と、中の鉄筋が錆びるわけです。これが怖い。これが俗にコンクリートの老朽化とされる。錆びた鉄筋は堆積を増し、周囲のコンクリートを破壊する(コンクリートの爆裂現象)。もちろん錆び(腐食)が進むと引っ張り強度も低下する。

ここまでいくと、ご臨終ですわ。

 

んで、西村氏が開発したのが、錆びない(錆びにくいとうほうが適切か?)鉄筋。

錆びにくい鉄ならステンレス使えばいいんでないの?と思うかもしれないが、これは普通の鉄筋の10倍もするわけで、建築に実用的に使える代物ではない。

西村氏の考案は、安価なスクラップ鉄にクロム鉄、マンガン鉄、シリコン鉄を混ぜ耐腐食性を持たせたもの。それでも、通常の2、3倍はするそうですが、普及していけばもっとコストは下がるはず・・(と期待するぞ)

 

んで、も一つ画期的なのが、既存の建物の老朽化(中性化)の度合いを簡単に計測し、コンクリートを正常なアルカリ性に戻す手法。

今までも、こうした手法はなくはなかったけれど、そもそもコンクリートの中性化を調べるには、コンクリートを一部解体して(試験体を取り出して)試験溶液などで調べるしかなかったので、その時点でコンクリートを痛めてしまうわけです。

 

開発された手法は、径1㎜、深さ数10㎜程度の微穴にセンサーを通して、測定できるもの。で、アルカリ性に戻すには、鉄筋に電流を流し、内部のマイナスイオン(塩素イオン)を排出することで、ph値を上げる。

 

が、彼のスゴイとこは、単に新しい技術を開発しただけで終わっていない。このph値と鉄筋の腐食の進行具合の相関関係を見いだしたことだ。学者肌ですな。

一定の値を超えるか否かで、鉄筋の腐食の進行度は大きく違うらしい。つまり、一見すると判別しづらい鉄筋コンクリートの劣化進行度を、ご臨終に近いか、まだ回復できるか、その数値で読み取れるということだ。

闇雲に建て替える必要もなく、闇雲に無駄な補修をおこなう必要もない。

実は、この判断が難しいところであって、所有者の間で一番もめるところでもあった。

 

彼のこの開発が、普及していってくれることを切に願うところですけど、しかしなあ、哀しきかな、所有者が変わっただけで、築10数年程度の建物を壊してしまう、驚くべきこのお国柄というか、国民の意識を変えないことには、どうにもなりませんけどなあ。

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