崩れる「お墨付き」

 

はっきり言って、驚きもしなかったし、あ、またきたね、的な。

ワタクシの感覚が麻痺してしまってるんでしょうか。ある意味、それはそれで怖いですけど。

メディアは、恰好の獲物でも捉えたかのように、その不祥事ををデカデカと煽る。

しかし、本質的なことには触れようとしない。

 

地震大国と言われる我が国で、免震装置や制振装置がが普及して久しい。

あ、ちなみに、免震と制振(制震とも書くが建築上正式には制振だそうな)は、微妙に意味違います。

簡単に言うと、震動を免れる装置なのか、振幅を制する装置なのか、という区別。

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詳しいことは、また別の機会にしまして、今回ニュースになったのは免震装置のほうだったわけですけども、意図的に騙すということは別として、結論から言うと、基準がどうのこうのいっても、所詮装置であって、100%この装置に安全性を依存できるわけではない。

決して東洋ゴムを擁護しているわけじゃないんだけど、一定のラインに達していれば倒壊しなくて、そうじゃないものは倒壊する、なんて議論は、地震という自然の力を前にしてはナンセンスであることは周知のことだ。

実際、このような免震装置は、直下型にはほとんど効果がないし、構造設計上、耐荷重として地震荷重が加えられるのも、水平荷重である。

 

だったら、大臣認定なんて必要ないじゃん、ってなるのですけど、建築というものは、数え切れないくらいの材料を使い、様々な工法があり、そして、時代とともに新しい材料も生まれる。

建築なんて、法律の塊みたいなものですから、壁一つ作るにも全て規定があるわけで、材料メーカーが、「新しい材料開発しました、ぜひこの建物で使って下さい」って、揉み手しながらゼネコンに売り込んでも、基準に適した性能があるものかどうか分からなければ、どんなによいものであっても使えない。

 

そこで、効いてくるのが、役所の「お墨付き」。

国が認めているものだから、間違いナイです、となるわけ。

この「お墨付き」があれば、もう、シメタもの。

ゼネコンも設計者も、だったら大丈夫だねって、盲目的に信用する。

まさか、販売されているものが、試験用に作ったものと違うなんて、考えもしない。

 

別に今に始まった話ではない。

こうした大臣認定の偽装は、今までも繰り返されてきた。

当の東洋ゴムなんぞ、2回目らしいですわ。別の建材だったようですが。

納期を間に合わすために、担当者が勝手にすり替えた、って社長さん仰ってますがね、いや、あーた、人ごとじゃなくて、あーたの会社ですよ。

こういう会社って、業務停止とかなんないの?(素朴な疑問)

 

何故、こうした偽装が繰り返されるのか。

 

他社に先駆けて、市場を独占しようとするメーカーの野望と私欲。

そこには、本当にいいものを作ろうという、情熱は、ない。

 

そして、根本的な問題として、この大臣認定の制度が機能していない。

今から遡ること8年前。

この東洋ゴムが絡んだ耐火性能偽装の発覚を受けて、当時の国交省大臣は、こう発した。

「実際に販売する商品と、認定取得のために試験用として提出されたものが違えば、見破るのは難しい。」

自ら、この制度は悪用できますよ、と言っているようなものです。

 

制度の不完全さを知りながら、その後も繰り返された認定偽装を横目で見過ごしてきたのは、国の怠慢としか言いようがない。

いや、敢えてメスを入れたくなかったのか。

「お墨付き」を出す性能評価機関には、国交省から多くのOBが天下りしているという事実からすると、彼らの立場を温存させる、見えない圧力があるのかもしれない。

 

国と評価機関との癒着。

さらに、業界の要人も加わり、国と業界との癒着。

もうね、「お墨付き」ってどんだけよって、ワタクシ思いますよ。

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