ここは住宅後進国

 

やな季節です。

ジメッとして、空はどんより。

でも、この曇天が過ぎれば、暑い夏がやってくる。

あぃや、今年ももう、半分終わった。なんてこったい。

 

さて、今日は「家」についてマジメなお話。

多分、日本人のほとんどが、日本の住宅は世界的に見ても、優れた、性能の高いものだと思っていると思います。

しかし住宅の性能と一言にいっても、さまざまな機能があります。

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耐震性。

これは、多分文句なしで他のどの国にも劣ることはないでしょう。地震国日本=耐震みたいな通念が、なんかしらん、異様に大きくなって、耐震という言葉だけが一人歩きしてる感もアリアリですが。

 

耐久性。

これは、建物がどのくらい長持ちするかってことですけど、木造の多い日本では、シロアリの処理や湿気対策をしっかりやっていないと、ジメジメ日本においては、劣化が激しい。ま、古い建物をちゃんと手入れして、長く使おうって感覚が、欧米に比べると低いってのもあって、ここは住む側の意識の違いもあります。マンションの場合は耐震性とかぶる面もありますが。

 

省エネ性。

車に例えると、燃費みたいなものです。どれだけエネルギーコスト(ランニング)が掛かる家かってこと。断熱がしっかりしてあれば、熱は逃げにくいですから、暖冷房コストも掛からないってこと。

 

んで、日本の家が優れてるってのは、実のところ耐震性のことで、省エネ性に至っては、全然遅れてます。あんだけ、省エネ、省エネってそこらじゅうで騒がれているにも関わらず、です。

ちょっと専門的な話をしますと、省エネ法によって、住宅の一次消費エネルギー(石油とか石炭の消費量に換算した値)の基準が定められていますけれども、そのトップレベルの基準値でさえ、ドイツのそれの5倍の値だってことですから、いかに日本の基準がアマアマだってことがお分かり頂けるかと。

さらに、ドイツでは室内温度が20℃以下になっちゃいかんのだとか。ひえ~って感じですわ。

 

確かに、ヨーロッパと日本では気候も違いますから、同じように比較はできませんけれども、根本的に違うのは、ドイツでは、エネルギー政策の一貫として省エネ住宅を推進しているということ。

そう、2022年までに原発ゼロを目指す、エネルギーヴェンデ(エネルギー転換)を政策として掲げていて、原子力や化石燃料に頼らず、再生可能エネルギーでエネルギーを賄えるようにしよう、と本気で取り組んでいる結果なのであります。

ま、このエネルギーヴェンデには、賛否両論があるんですが、それでも、実際に実行に移して、結果を着々と出してますから、口先だけの日本とは大違いです。

 

ドイツも日本と同じく、エネルギー資源のほとんどを輸入に頼っている国です。

それもあって、自国内でエネルギーを賄えるようにしよう、んでもって、それに関わる産業を生み出し雇用を増やそうってな調子で、経済的効果も狙っているわけです。

 

いえ、なにもドイツをヨイショするつもりではないんですけど、ただね、日本の「家」の歴史を見てみると、あまりに「耐震」に重きを置きすぎて、「省エネ」についてはなおざりにされてきたように思うんです。

日本で、「室内温度が20℃以下の家をつくるなんざ、人権侵害だ!」って、言ったら、お前アタマオカシイんか?って言われるのが関の山ですけど、それが普通の感覚として浸透しているらしい。

暑い、寒いを含め、「我慢すること」が美徳のように思われている日本では、建物の燃費を上げることよりも、クールビズだのウォームビズだのが、多くもてはやされ、浸透した。

既存住宅において、省エネ性能向上に向けた断熱改修などが進まない理由の一つかもしれない。

ドイツなどでは、公共住宅の割合が多いので、政府主導で進めやすいってのもありますが、それでも、根本的に、快適な住宅に住むことは人間の権利だ、と思っている国民の意識は随分違う。

 

ちょっと前、老人ホームに入所している婆ちゃんを訪ねた。

最近できたばかりの真新しいホーム。

しかし、婆ちゃんの部屋は西日が差し込み、まだ梅雨前の6月初めだというのに蒸し暑く、エアコンフル稼働状態。

外壁の断熱性能上げるとか、窓サッシの日射遮蔽性能上げるとか、もうちっと考えればエアコンフル稼働しなくて済むのにな~と、無駄な抵抗と分かりながら、そっとカーテンで西日を遮った。

 

結局、我々の多くがイニシャルコスト+ランニングコストで、建物を評価することができず、どうしても初めのコストが安く収まる方になびいてしまうということだろう。

 

さてさて、こうやって住宅の省エネ性能を紐解いていくとね、脱原発じゃー!と、声高に叫んでる人たちって、本当に真剣に考えてんの?って思うわけですよ。

だって、エネルギー転換は、エネルギー源を変えるだけでは不可能で(これはもう、みなさんよくわかっていることだと思うんですけど)、エネルギーを消費するところの改革が絶対必要ですから。彼らの主張には、ここの政策がなんにも見えんのだよ。

 

車の燃費はピカイチ。設備器機の省エネ性能も格段に向上した。

が、住宅の燃費は、今ひとつ。

日本の「家」は決して性能がいい、というわけではない。

残念だが、これホント。

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