迷宮化する偽装事件

 

少し、ほとぼりも冷めたのか、材料出尽くして突っつくとこなくなったのか、キモチ静けさを取り戻したようでござる。といっても、それは世間体であって、実のところ、業界内では缶の虫を開けてしまったように、どうにもこうにも手に負えなくなっているという気がする今日このごろ。

 

杭のデータ偽装が発覚して、カレコレ1ヶ月半。

その後、次々とあっちもこっちも的に増え、最終的には旭化成建材で360件ですか。

おまけにジャパンパイルの名前まで出てきて、まっとうな人が聞いたら、建築人間不信症に陥るんじゃないかと、少々危惧しております。

 

あらかじめ断っておきますけど、決して彼らをフォローするつもりはないし、建築の世界ってそんなもんよ、まあよくあることよ、なんて、言い訳がましいことを言うつもりは毛頭ない。

しかし、それにしても、メディアの煽りは何とかならんのかと、いささかウンザリ気味。

まあ、注目を集めるために、事実の一部を切り取って大々的に報じるのは、今回の件に限ったことではないけれど、ただ、専門的見解を飛び越えて、お先真っ暗的に報じるのはどうかと。

偽装という行為そのものは、許されるべきものではないけれど、肝心なのは、で、どうなのよ、その建物、ってこと。

なのに、ここを深く掘り下げて取り上げる記事は、ほとんど目にしない。

無理もない。

業界人の間でも、様々な意見が飛び交っていて、かなり混乱していますから。

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そんな混沌とした状況の中、つい先日、横浜市がこの問題となったマンションについて、違法性はないということを公表したモヨウ。。

何を根拠に?と思って見てみると、支持地盤に未達の杭を除いて構造計算をやり直したところ、必要な構造耐力はあったと。

 

ワタクシ、構造専門ではないので、確かなことは申し上げられませんが、そもそも必要のない杭(8本も!)を入れて構造設計する構造設計士なんていないと思うんですが。

そんな不経済設計してたら、自称経済設計士を名乗る(名乗っていた)姉歯さんに怒られますよ、と。

今回は設計・施工で元請の三井住友建設が設計しているから、とりあえず入れとけ、ってな感じだったんでしょうか。

ここら辺、もっと調べる余地あるんじゃないでしょうかね。

 

で、コレ書いてたら、「元請が短い杭で設計」ってなニュースが。あちゃ。

やっぱり、来るとこ来たね、元請さん。

記者会見で、「下請けに裏切られた」と、自ら高い位置に居座って、まるで自身が被害者ででもあるかのような発言には、開いた口がふさがりませんでしたけど、言っとくが、元請に責任のない工事なんてないんだよ、責任施工といえども。

とはいえ、これも真相ははっきりしないので、もっと深く調べる必要はあるでしょうな。

なぜ、短くても大丈夫だと判断したのかは、設計した本人に聞けばわかるはずだろうから。

 

結局のところ、安全上問題がないと判断するのは、技術屋なり設計士なり、それなりの専門知識と経験とを備えたプロである。

実際、データ不正の行われた建物についての検証方法も、まずは書面で、判明が難しい場合は、地盤調査でっていう流れらしいけど、実のところ、これでどのくらいわかるものなのか、未知数が多すぎる気がする。

とはいえ、何もしないわけにはいかないから、お役所はマニュアルにとりつかれたように動き出す。

 

「このぐらいだったら大丈夫、問題ない」こう判断する場面は、杭に限らず、建築の様々な場面で遭遇する。

そこには、専門的技術的知見に加えて、長年培われた経験がモノをいうところもあるのだが、これを、ある技術者は工学的見解という。

技術者の裁量は、専門的になればなるほど、その威力を発揮する。

しかし、見える形での証となると、法で決められた基準に準ずるしかない。

 

データに不正のあった建物が、即「危ない建築」とはならないことは言うまでもないが、杭施工に問題があった建物も含めて、その検証と仕分けは、非常に難解を極めるだろうことが想像される。

安全かどうかの判断がつかないまでに、所有者や住民たちを、むやみに不安に煽り立てるようなことは避けてほしいと願う一方、どこまで信頼性の持てる検証ができるのか、迷宮の出口は、まだ見つかりそうにもない。

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