姉歯物件論争(?)について思うことをちょこっと。

 

えっと、ちょっと迷ったんですけど、でもやっぱり、なんかあれ読んで勘違いする人いるんじゃないかと思ったので、ちょっとだけ老婆心さながらの心持ちで書いておきます。

ちょっと前、長谷川豊さんとやまもといちろうさんが、なにやら姉歯物件についてあーだこーだ、やり合っていたようですけど、まあ、個人的には、ですね、なんて言うか、著名なブロガーさんが他人の記事の揚げ足の取り合いのような論争を繰り広げるのは、どんなに正当なものであったとしても、読んでてあまり気持ちのいいものでもないので、内容についてどうのこうの、言うつもりはない。

まあ、言ったとしても、彼らからすればワタクシの存在なんて、サーバー上の塵のようなものだから、何の影響もないと思うけど、ちょこっと。

 

周知の通り、姉歯事件とは、姉歯さんという元建築士が構造計算書のデーターを改ざんして、あたかも法基準に適合するかのように見せかけた、まあ建築史上かつてない大事件だった。

意図的に書き換えているのだから、構造強度は満たしていない。

 

実際、ワタクシ自身もいろんな方から同様の質問を受けました。ハイ。

「耐震基準を満たしていない姉歯さん物件は、先の東日本大震災で倒壊しなかったのですか???」

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厳密な調査をすれば、(実際、まともに建てられているものでも損傷はあったのだから)何らかしら建物に損傷は起きているかもしれないが、倒壊したという話はない。

あまりにも、いろんな方からご質問を頂くので、ワタクシ自身も国交省に問い合わせて確認しましたけど、災害当時までに、大方は耐震補強を終えているということだった。

が、中には数棟、手つかずのものも残っています、と言う回答。

ただ、その当時までに、姉歯さん物件以外でも耐震不足物件が摘発されてましたので、それが姉歯さん物件だったかどうかは記憶にない。

 

社会的にといいますか、一般的に物事の良し悪しを判断するには、一定の基準(スタンダード)があって、それをクリアするか否かで線引きされる。

建築においては、そのスタンダードが建築基準法になるわけですけれど、法律というものは、頻繁に改訂される。

 

ここで、「基準を満たしていない建物」という時に、いわゆる「違法建築」と「既存不適格建築」に分けられる。前者は、それこそ姉歯物件のように、意図的に違法が行われた物件、後者は、法改正により、現行の基準に合わなくなった物件(旧基準には合致する)をいう。

 

もちろん、意図的に行われたものに対しては、けしからん!となるわけですけれど、そういうことを抜きにして、建物の安全性だけに着目すると、「違法」も「既存不適格」も「基準を満たしていない」という一点については、同じなんですよ。

 

そして、この「旧耐震基準」の建物、住宅用途だけに限っても、全国で3割以上もあるわけです。

基準を満たしていない建物をほったらかしちゃいかんだろ、や、確かにそうなんです。

でも、現実問題として、故意か否かに関わらず、建物本来の性能に着目すればですね、姉歯物件がどうの・・とかいうのはナンセンスな話でして。

補強すべきだ、ええ、確かにその通りです。でも姉歯物件は賠償金が出たからいいですが、一般の既存不適格物件、自腹で補強工事やってるのは、1割にも満たないのが現状です。

もっと言うと、補強工事をしたからOK、というのもちょっと飛躍しすぎの感が否めない。

補強というのは、あくまで強度を「補う」のであって、本来持つべき強度が復活するわけではない。

もちろん、やらないよりはやったほうがいいですよ。

 

法律を無視した建築、確かにこれは許されるべきものではないけれど、建物が本来備えるべき安全性はどうなんだ、となると、単に、合法違法という話ではない。

法を守るというのは、建築基準法でいえば、もちろん最低限の建物の性能を確保する意味はあるのですけど、それ以前の作り手のモラルの話であって、基準を満たす満たさないが、そのまま建物の品質を意味するものではない。

例え合法であっても、造る過程で大きく品質が損なわれている建物は、ゴロゴロあります。

 

最も大事なことは、現実的に安全かどうか、それを見極めることではないかと。

・・・ちょこっと、のつもりが長くなってしもた・・・オシマイ。

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