泥沼化する復旧工事訴訟-ミューザ川崎の行方

 

先の東日本大震災で、天井崩落被害は、現地から離れた関東圏でも起きた。

天井を含め、こうした内装材というものは、構造体に比べるとはるかにチャチイ。

地震の揺れで、真っ先に壊れるのは、こうした内装材からだ。

 

しかし、チャチイわりに、以外と重いんですよ、天井ボードというものは。

住宅等に使われる天井ボードは9.5㎜厚のものが一般的で、規格品910×1820㎜サイズで10kg超。

この重量のものが、天井から何枚もドサッドサッと落ちてきたら、小さな子供なら窒息死するでしょう。実際に、先の大震災では、天井落下による死者は何人も出た。

 

関東圏でも、ミューザ川崎シンフォニーホールの吊り天井が落下。

写真:川崎市
写真:川崎市

一応、復旧工事に着手してはいるものの、事業主の川崎市は、吊り天井部材の強度不足が原因だとして、当初新築工事に当たった設計者、施工者ら計8社にこの復旧工事費を請求した。

ところが、8社は応じず。川崎市は、提訴に踏み切った。

 

さらに、今度の復旧工事を担当した施工会社は、強度を確保する為に、部材量が大幅に増えたとして、川崎市に追加工事の請求。

が、川崎市は工事内容に変更が生じても変更契約はしない条件という理由で、請求に応じず。

施工会社は提訴に踏み切った。

 

泥沼訴訟の構図は以下の通り。

 

[川崎市] →提訴→ [新築時の設計者・施工会社]

提訴

[復旧工事担当施工会社]

 

まー、何といいますか。

確かに、億単位の額ですから、人間世知辛くなるのはわかりますが。

川崎市にとっては、大事な公共資産であるわけだし、費用だって当然ゼイキンですもん。

ハイ、そうですか、というわけにはいかない。

たぶん、私が川崎市民なら、エエエーーーッってなるだろう。

 

追加工事費の請求は、請負契約上、ちょっと論外ではないか??という感は否めない。

が、難しいのは、災害による責任はどこにある?ということだ。

 

震災後に流行した「想定外」という言葉が正当化されるなら、設計・施工に対するどんな災害事故も言い逃れできてしまうような気がする。

構造体のように、〇〇N(ニュートン)の荷重に絶えられる強度、とかいった明確な数値上の規定が、内装材にはない。

だから、設計・施工ミスだ、とも取れるし、「想定外」だとも取れる。

 

実は、自宅のマンションでも、先の大震災でエキスパンションパネルが剥離する、という被害があった。結局、補修費用は、施工会社と管理組合で折半となったんですがね。

 

設計者や施工者は「不可抗力に備えよ」という意見もありますが、設計者や施工者の責任は、一体どこまでなんでせう??と考えた次第。

ま、ただ、酷いことやってる方々もいらっしゃるから、疑いの目を向けられてもやむなし、みたいなところはあるんですがね。。

んーー、むなしい限りですナ。

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