不動産売買はどうして売主が強いのか。

 

えーっと、ワタクシ、こと不動産取引において、どうも腑に落ちないことが一つだけありまして、それが不動産業界の進展を妨げ、ものすごく遅れた世界にしているんじゃないか、と常日頃思っておるのでございます。

普通、お店に行ってモノを買うとき、お店の人、つまり売り手は、お客(買い手)を立て、「お客様は神様です」精神で買い手よりも低い姿勢に徹しますね。

まー、たまにぞんざいな店員に当たって不快な思いをすることもあるのですが、それでも、買う気がないなら出てけ、と内心思っていたとしても、間違っても面と向かって客に暴言を吐いている光景に出会うことはまずない。少なくとも、ここ、資本主義社会においては。

 

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ところが、こと不動産取引においては、これが逆転し、いきなり売主がえらくなっちゃうもんだから不思議ですねー。

なんでしょうかね、あれ。

 

先日も、中古マンション売買の事前調査で立会いさせて頂いたときのことですが、そこはまだ売主さんが居住中で、売主さん、買い主さん、そしてそれぞれの仲介さんという登場人物総出の中での調査となったわけであります。

 

買い主さんは、やたらと売主さんに頭を下げ、手土産まで持参するという徹底ぶり。

まあね、買い主さんの意向で当方の調査に入らせてもらうわけですから、その気遣いは大したもんだなあと、感心しておりました。

一方、売主さんは、こちらが調査の説明をすると、忙しいからそんなに長くは付き合えないよ、とまあ、つっけんどんに言い放つわけであります。

もちろん、事前に調査のためにお伺いすることは伝えてあったはずですから、急な訪問ということではなく、向こうも了承してのこと。

とはいえ、お互いの関係を気まずくしてはならん、とそこは臨機応変に対応しましたけどね。

 

不動産会社が売主の場合は、会社ということもあってか、良心的な対応をする売主さんも、最近では見かけるようになりましたが、個人の場合は、得てして、売主さんの態度がでかい。

昔の「地主」的な感覚なんでしょうかね。

 

売主主権を象徴するかのように、個人が売主の場合の売買契約では、「瑕疵担保免責」が慣習となっている。

「瑕疵(かし)」とは、欠陥とも言われますが、本来あるべき機能・性能・品質が備わっていないものをいい、要するに、建物に機能的な不備(例えば雨漏りだとか床が傾いているとか)があっても、わたしゃ、知らんよ、買ったあんたで直しなさいよ、ということ。

もちろん、事前に分かっていれば、その補修費用は予測はできるし、その負担分を価格交渉もできる。

しかし、普通ぱっと見でどれだけ劣化してるかなんてわかりゃしないし、今は分からなくても1ヶ月後に発見されることだってあろう。

そういうリスク軽減の目的で、我々が事前診断を行うんですけどね。(ちょっと営業してみました)

 

不動産会社が売主の場合は、この「瑕疵担保免責」は法律上できない。必ず、最低2年以上の担保期間を設定しなければならない。

が、売主が個人の場合は、法律上の縛りがないので、普通は責任回避で免責にしてしまうのが一般的。仮に、免責にしなかったとしても、経済的な事情で不動産を処分した売主にとっては、実際問題その補修費用を負担できないケースも多い。で、結局は買った方が泣き寝入りをするというパターンは珍しい話ではない。

 

で、そうした事態に備えるものとして、「瑕疵担保保険」というものがある。

これは、売主が予め保険に加入しておいて、何か瑕疵が発見された場合にその補修費用が保険金で賄われるというもの。

新築住宅の場合は、平成21年に「瑕疵担保履行法」が制定され、住宅供給者(デベロッパーとかハウスメーカーとか)は保険加入が義務となったが、一方既存住宅の場合は、まだ任意。というか、この保険商品そのものが機能していない、と言う方が正しい。

というのは、既述の通り、既存住宅の場合は劣化度合いが様々で、現状の状態をきちっと把握できないと、保険屋さんも保証しましょう、とはならない。

で、この保険システムの中で検査を行う専門家が曖昧であるということ、そして、保険商品も1種類しかなく、保険料+検査料をあわせて、7~8万円を自腹で払ってでも売ろうとするリテラシーの高い売主は、そうそういない。

 

ということで、幽霊的存在であった「既存住宅瑕疵担保保険」だが、ここに来て動きが出てきた。

保険協会の方で、一定レベルを持つ検査員を登録制とし、保険金1000万円で5年ものしかなかった保険商品も、500万円で1年ものという、軽めのものを取り揃えるようになった。

保険費用は負担しますから保険加入して下さいって、買い主が売主に対してお願いすることも可能だが、あくまで任意ですから、売主が、「検査なんぞされちゃたまったもんじゃない、そんな面倒なことはやらん!」と拒絶してしまえばそれまで。

 

でもね、極々一般的な心理からするとですね、既存住宅購入者にとって保険加入してるのとしていないのとでは、安心感に雲底の差があると思うんですよ。

どーーーーしてもその物件じゃなきゃダメだ、って言う人以外は、じゃ他にするかって、普通なると思うんですよね。

 

こっちの条件飲まないなら売らん!って言ってる売主さん、そのうち疎外されていくんじゃないかなあと、興味深く見ております。

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