人生折り返し地点も過ぎると、記憶が薄れていく。
脳が老化したからではない。
長い年月の中で脳に蓄積されたメモリーが多くなって、
引き出すのに時間がかかるだけなのだ。
という話を聞いたことがある。
確かに、脳は鍛えるほど活性化するともいう。
脳の仕組みはさておき。。
建築に目覚めたのは、昭和が終わり、日本が新たな時代を迎える節目となるころ、
学校でいろはを学び、建築に夢と憧れを抱いていた。
が、とたんに日本中が奈落の底に落ちた。
株価暴落、倒産が相次ぎ、債務に追われる経営者の自殺が後を絶たなかった。
学校を卒業しても就職先すらない。
希望も何もない学生生活の終焉だった。
けれど、天然の「なんとかなるさ」精神と若さ故のエネルギーか、
卒業後、ふらりと渡仏。短期留学なんぞやってみたりと、のほほんと過ごしていた。
それでも流石に焦りを感じ、やっとこさで探し当てた設計事務所は、まーそれはそれは酷いものでしたねー。どこやらの独裁国家の縮小版みたいな。真面目だけが取り柄(?)な私は、それでも真面目に働いた(と思う)。
しかし、突然、所長の言いがかりを食らった。
「明日から来ないでくれ」
「は?」
今思い起こすと、たぶんそう言わざるを得なかった所長の心境が見て取れる。たぶん暴露すれば、彼はブタ箱行き。(や、もう時効かな)
そこから私の人生の歯車は狂い始める。
もう建築なんてうんざりだ。
それから暫く、闇の中で生きた。まさに生きる希望を失ったというと大げさか?ま、そんな生活が続いた。
それでも働かなければ食べていけない。なにか仕事を探そうとするが興味がわかない。
やはり、戻るところは建築か。
で再び建築に舞い戻った場所が、不動産業界牛耳るデベロッパーだった。
そこで、不動産業界の奇妙さに出会う。
不動産に興味を持ち始めたのも、これがきっかけかもしれない。
デベロッパーから引退。
フリーとなった今は住宅診断で現場に突入することしばしば。すると常識が覆されるような建築業界の実態に出会う。
まだまだ未開の地はありそうだ。
私の脳だけにとどめておくのもモッタイナイ。
と思い立ち、一人の建築人間が見た建築と不動産の不思議な世界をここに綴っていこうと思う。