前編に引き続き。
「国家戦略特区」なるものが制定された場合、有利な生産活動の場へと企業が流入し、人・モノ・サービスが活況を帯びる。
先導してインフラ産業が要求され、建設そして不動産市場に追い風が吹く。
さらに、今、注目を集めているのが東京五輪だが、仮に開催が決定となると、より一層強い追い風が期待される。
月末から来月初頭にかけては、目が離せない。
都心への期待が高まる一方で、全国的に不動産市場が底上げされるのかというと、成長国であればそれも期待できるのだが、日本のように成熟した国では、必ずしも楽観視できない面がある。
都心へ流入は、反対に地方の流出を意味する。それでも、人口が増え続けていればまだよいが、地方の過疎化は、日に日に深刻さを増す。
先般、報じられたデトロイトの財政破綻が、重なって見える。
デトロイトは、かつて人口180万人、全米第5位となるほどの大都市であった。言うまでもなく、自動車産業の成長とともに拡大した街である。
70年代までは、アメリカには人種差別が歴然として存在していたこともあり、拡大していく街で、警官が黒人少年を殴るなど、治安の悪化が問題視され始めると、富裕層は次第に街から姿を消し始める。
そして70年代に入り、日本車の台頭で自動車産業が振るわなくなると、徐々に企業の倒産や解雇など、企業の撤退とともに人口の流出に歯止めが効かなくなっていった。
街に残るのは、市街地の繁栄とともに整備された道路や上下水道などのインフラ。しかし、企業や人の流出で税収が激減する中で、こうした公共設備の維持管理費が財政を圧迫する。
次第に、街は荒廃していった。
市は、連邦政府から補助金を受けて、街の再生に乗り出すが、時既に遅し。
犯罪の温床となっていた空き家などを解体し、街の再開発に取り組むが、住民や企業が街に戻り、市が抱える巨額の負債を解消するまで、時間は待ってくれなかった。
時代とともに、人口の増減や、産業の栄枯盛衰は、避けることができない。
産業が衰退し、人口が流出していくのに、有効的な対策を怠ってきた自治体に責任はあるのだが、
これは、国として(米国のような巨大国家では州になるのか)取り組むべき課題であると考える。
これは米国に限った話ではない。
もし、2度の追い風が吹いたとすれば、都心の成長を押し上げる一方で、極度の2極化が進まないよう、地方自治の取り組みの強化とそれをバックアップする体制も期待したい。
都心の華々しさ、先進的な都市イメージ、それに呼応するように、地方都市にも守るべき日本の伝統文化が息づくはずである。