貧しさゆえに。

 

先般のバングラディシュ縫製工場ビル崩壊に続き、カンボジアでもまた、靴工場が崩壊した。

死者は今のところ10数名と報じられているが、正確なところは分からない。

結局、バングラディシュも、日に日に死者の数が増え続け、1100人を越すまでに至っている。

奇跡的に17日ぶりに救出された人もいるけれど、がれきの下敷きになって、救出されずに息を引き取る人が絶えないのだ。

 

バングラディシュにしろ、カンボジアにしろ、かなり衝撃的な事故なのだが、実は氷山の一角ではないか、と思う。

バングラディシュは、ユニクロが大多数をこの国で生産していることで有名だし、今回倒壊したカンボジアの靴工場は、アシックスの関係会社が発注をしていた。

だから、たまたま知ることができたのかもしれない。

でも、おそらく、いや絶対、貧困国ではこういう危険な労働環境や住宅環境は、ざらにある、と確信する。

 

建物だけではない。

今回のバングラディシュの事故によって、劣悪な労働の実態も露呈した。

 

バングラディシュで事故に遭遇した21歳の女性が、取材にこう答えた。

「回復したら、また(縫製の)仕事に戻りたい。今回務めていたところで働けなくなったとしても、他の工場へ行くつもりだ。」

 

一日の労働時間は平均12時間以上、深夜2時、3時に及ぶこともある。

月収平均38ドル。

それでも、農村で働いていたときよりも、ずっと暮らしは楽になったそうだ。

彼女と彼女のお姉さん二人、縫製工場に勤め、家族が暮らす家の家賃59ドルを賄う。

彼女たち姉妹が、家庭を支えているのだ。

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危険な場所、劣悪な環境での過酷労働、それでも彼女達は、自らそこを選ぶ。

その根底にあるものは、貧困。

貧しさ故に、危険に晒されなければならないのか。

何か違う。

 

貧困国が新興国へ成長するときは、貧富の差が目立って表れる。

富裕層が急激に豊かになる一方、低所得層の生活レベルはそれほど変わらない。

国の組織や社会のルールは、富裕層に都合の良いようにできあがり、汚職がまかり通るゆがんだ国家となる。

 

郷に入れば郷に従え。

だが、人権を踏みにじる慣習まで従う必要はなかろう。

発注先である先進諸国企業が、地元工場にあーだこーだ、言えるもんじゃない、というもの一理あろう。が、コンプライアンスを重視する姿勢を見せることは重要だ。

安い労働力を求め、そこから利益を得ようと考えるならば、その労働力に恩恵を返すべきではないだろうか・・・と考える。

 

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