空中権売買

 

 

首都東京のど真ん中を、縦横貫く首都高速道路は、その大半が築40年を経過している。

先般起きた、笹子トンネル天井落下事故に代表されるように、今、日本では老朽化したインフラの改修・修繕が目下の課題だ。

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回復基調にある日本経済だが、大借金国であることは依然変わりはない。

やらなきゃマズイのは周知のとおりなんだが、莫大な改修費用が、悩みのタネ。

で、浮上した空中権売買。

突然湧き出たアイデアではない。

 

実は同じ手法が東京駅の改修時に採用されている。

東京丸の内の高層ビル街の中心にあって、そこだけ陥没したように東京駅は低層建物だ。

都市計画法上の制限からすれば、本来もっともっと高層にできる建物である。

 

が、歴史的建造物としての価値を高く評価されている東京駅は、立替えずに昔ながらの形を保ち、もっと高くできるはずの空中部分の容積率を、周囲の民間の地権者に払い下げて、その改修費用を賄った。

(容積率とは・・建物の敷地面積に対する延床面積の割合。大きいほど高い建物が建てれる)

 

これと同じ手法を首都高でもやろうぜ!

と安倍さん軍団が旗を揚げているのだ。

 

場所は京橋から銀座まで、地下に潜っている部分。

周囲より低くなっているが、道路上空は抜けている。

そこに屋根をかけ、地面(厳密には屋上だが)をこしらえた上で、そこの地上権(建物はないので空中権になるのだが)を周りの地権者に売却するというものだ。

全ての費用を賄うことは無理だろうが、税金の出費も抑えられるという意味では有効だ。

 

しかし、だ。

丸の内でできたことが、銀座でも同じようにできるか、といえば多くの疑問が残る。

まず、丸の内周辺は都市再生特別地区、いわゆる特区に定められているので、さまざまな建築制限が緩和され、特例で開発がどんどん進む。

一方、銀座のある中央区は、街並みづくりのための独自の規制を設けている。

建築基準法によらず、建物高さを一定に揃えるなど、街並みの統一を目指した、いわば日本一街並み整備に厳しい行政区だ。

中央区自治体と国との交渉が、スムーズにいくのか注目される。

 

あともう一つ。

私見ではあるが、少なからず不動産価格のゆがみが出るのではないか、ということ。

毎年公表される公示地価の評価以上に、不当に高い値が付くことが起きるだろうことは、容易に想像ができる。

もともと道路付けも悪く、容積率もそれほど高くなくて評価の低かった土地が、「おまけ」が付くことで高価格で売買される。

しかも都心でありながら規制の厳しかった銀座なら、不動産屋がよだれを垂らして欲しがるのは言うまでもない。

不動産価格のゆがみが、劣悪な都市を形成していくのは、バブルで経験済みのはずだ。

 

現行の規制を単に緩和するだけでなく、売買を可能にする代わりに、あらたな開発規制が必要だ。

安倍さん軍団と民間開発業者が、ウハウハとおいしい料理をテーブルに並べるのを眺めながら、中央区の冷静な判断に期待したい。

 

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