貧困国からの脱出

 

 

日に日に増す死者の数を目にするたびに、悲しみを通り越して怒りさえ覚える。

先般、バングラディシュで起きたビル崩壊事故の死者が600人を超えたという。

救出が遅れているのも理由だろう。

 

起こるべくして起こったと思える悪劣な労働環境とずさんな安全対策は、この事故の犠牲を払って改善されるのか。

昨年起きた、ビル火災事故(死者110人)の後も、安全に対する姿勢は何ら変化がなかったことを思うと、国に対する期待は少ない。

写真:ronipothead
写真:ronipothead

これを変えることが出来るのは、唯一、この国に労働力を求める先進諸国アパレル業界だという声がある。

 

60%を占めていた同国の貧困層が、縫製産業の雇用増加に伴い、30%まで減少した。

事実、女性が外に出てお金を稼ぐという社会構造が、国全体の生産性を押し上げているのだ。10年前の中国と同様に、他国に秀でた競争優位にある安い労働力が、この国を貧困国から中所得国へと押し上げる鍵となる。

 

安いコストで高利益を狙う企業にとって、労働環境を改善したり、安全対策にコストを掛けるなんて、堂々と言わないとしても心の奥底では「無駄」と思うに違いない。(だから、今までなおざりにされてきた。)

が、もし日本を含め欧米諸国のアパレル産業が、今回の事故をきっかけにこの国から撤退したり、旧態変わらずずさんな安全対策のまま、悪劣な労働環境下で生産事業を続けていったとしたら、おそらく、そのツケは企業に返ってくる、と私は思う。

 

今、バングラディシュには5000にも上る生産工場があるが、そのうちコンプライアンス基準を備えている工場は僅か1~2%。

労働組合で、積極的に活動を行おうものなら、非人道的扱いを受け息の根を止められる。

文字通り、殺されるのだ。

しかし、こういった非人道的粗悪な状況は、歴史が物語る通り、長くは続かない。

いつしか労働者の反発を買い、製品の品質低下、ひいては経営者に対する暴動へと繋がることを、彼らは自覚してほしいと思う。

 

企業が、この国で生産性を高め高利益を望むなら、まず労働者の安全と環境改善の為に、企業同士が連結して取り組む姿勢が必要だ。

国が動かないならば、企業が自らやればよいだけのことだ。

1企業の力は小さくても、連結して集団となれば、国を動かすだけの影響力があるはずだ。

政府にはびこる汚職、軍の隠れた影響力、それらを一掃させるだけの力が、必ずある。

と信じたい。

 

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