無法地帯で起きる悪夢

 

 

こういう場面は、ここ日本にいたら、超常現象としか言い表せない。

事故を報じる記事も「数分間のうちに、パンケーキのように崩れた」と表現している。

日本的に言えば、豆腐が潰れる、となるのだろうか。

バングラディシュの首都ダッカで、突如ビルが崩壊した。

地震ではない。文字通り『突如」である。

写真:バングラディシュ内務省
写真:バングラディシュ内務省

 

超常現象と称したのは、まずこういうふうには崩れない。

たとえ、大地震が起きても。

日本の基準が世界に通用するかどうかは、ここではちょっと隅においておこう。

 

基本的なコンクリートの性質が理解されずに、形だけが出来てしまった結果、起こるべくして起こった悪夢・・・というには、何ともやるせない。

単純な、ほんの些細な基本さえ分かっていれば、助かった命もあったはず。

こういうふうに崩れるのは、無筋(鉄筋が入っていないか、入っていたといても限りなく無筋に近い状態)。

ほぼ、間違いない。

 

そして、増築に増築を重ねた結果、自重を支え切れなくなった耐力不足。

見ると、凄まじい増築履歴!

当初、4階建てRC壁式構造。

その後、5階から8階まで、4フロアを増築。

そして崩壊時は、9階の増築工事を行っていたという。

モチロン補強工事なんて、どこ吹く風・・てなもんで。。

 

自殺行為ですわ、あんた。

さらに、報道記事によると、敷地の一部は池を埋め立てた軟弱地盤だったらしい。

 

コンクリートは、圧縮に強く、引っ張りに弱い。

鉄筋は、その逆。

で、両者を組み合わせることで、構造体としての強度を発揮する。

地震の揺れで、豆腐のように潰れないのはその為である。

 

ただ、圧縮に強いといっても、当初の倍以上の荷重がかかれば、常識的に考えて潰れますわな。

まー、ここでは構造計算なんて概念もないのだろうけど。

んで、限界耐力を超えたところで一気に崩れる。

鉄筋の粘りがないから、まさに「数分」のうちに。

 

このビルには、複数の縫製工場が入居していた。

崩壊する前日、従業員が柱や壁に亀裂が入るのを目撃して、屋外に避難したらしいが、工場の経営者は仕事に戻れ、と。

警察がビルを一時閉鎖するように命じたにも関わらず、である。

 

そして、悪夢は翌朝、勤務開始後間もなくして起こる。

200人もの尊い命が消えた。

 

 

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