一言で言うなら、原石だろうか。。
まだ、加工される前の、磨かれていない素の石。
でも、そのゴツゴツとした外見と裏腹に、内には膨大なエネルギーと魅力を秘める。
東西5km、南北2、3kmほどの狭い範囲にビルがニョキニョキと、つくしのように芽を出している。
インフラが整備されているのがこの範囲だけなので、実はもっと広いウランバートルなのだが、ここにビルやマンションが集中するわけだ。
で、その他の地域は、というと基本は「ゲル」。
ウランバートル中心部から、ちょっと外れると、辺りの景色は一変する。
一気に時代が100年遡ったかのような、錯覚を覚える。
給排水設備はない。
水は近所の井戸や配給所で調達。
ポリタンクに入れて運ぶのは、子供の仕事。
この水で、飲料用から洗濯、入浴まで全て賄う。といってもお風呂はないので、体を拭く程度か。
トイレは外での青空トイレ。
乾燥しているので、大も小も、あっという間に乾くらしい。
セントラルヒーティングの都心部と違って、暖房は石炭ストーブ。
燃料の石炭も、道ばたで大量に売られている。
ちなみに都心部のセントラルヒーティングは、郊外の火力発電所から巨大なパイプに熱湯を通して、各建物まで供給される。
ゲルからマンションへ。
国の政策として掲げられている住宅供給整備。
暖かいマンションでの快適な生活は、石炭ストーブの使用を終わらせ、大気汚染の防止へと繋がる。
だけど・・・。
ふと、思った。
確信はもてないが、こういったゲル住まいのような個々が集まって暮らすところには、きっと大なり小なり、それぞれのコミュニティがあるはずだ。
遊牧を生業としている地方のゲル住民と違って、ウランバートル郊外に移り住んできた人々は、職を求めてやってきて、定住している。
互いに日々顔を合わせ、互いに助け合い、協力し合って生きているコミュニティがあるはずだ。
もし、これらのゲル住民をマンションへと移住させてしまったならば、貧しいながらに彼らの支えとなっていたコミュニティは、消えていく・・・かもしれない。
今、ウランバートルはものすごい勢いで成長をしている。
その成長に便乗できた人々はどんどん裕福になる一方、成長産業に関わりのない貧しい人は、依然貧しいまま。その格差は日ごとに大きくなっている。
マンション移住は間違いではない。
インフラが整った場所では、子供達は水汲みの仕事をしなくてもよい。
その時間を勉学に費やすことも出来るかもしれない。
が、忘れてはならないもの、失ってはならないものは、彼らが一番よく分かっている。
モンゴルの文化と彼らの誇り、そして人と人との繋がり。
大事なことは、たぶん、一番見えないところにある。