違法建築を救済するおかしな御触れ

 

えーっと、またもや物議を醸し出すような報道が、建築業界をザワつかせておりますけれども、うーん、どこまで言っても机上理論と実務者との間には、埋まらぬギャップというものがあるようでゴザイマス。

 

先般、国交省が公表したこの指針、要するに、検査済み証がなくても、増改築しやすくしましょう、といった主旨なのですけれど、既存ストックの活用を進める施策としては、画期的なものでありますけれども、うーん、どうなんでしょうかねえ、というのが末端の意見であります。

説明しておくと、検査済み証というのは、建築工事が完了した際に、図面通りに(厳密に言うと建築確認申請図書通りに)作られているかどうかを検査して、問題ありません、適法ですという証明書。

建築主は、役所や検査機関に「自ら申請して」検査を受けなければならない。←これ建築主の義務なんですよ。この検査済み証が交付されるまでは、原則、建物は使えません。

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ところがですね、この検査を受けていない建物が、実はゴロゴロあるんだわ。

出典:国土交通省
出典:国土交通省

もちろん、中には単純に忘れてたってのもあるかもしれんが(んなわけあるか!と思いますが)、まあ大半はですね、違法をやってるわけです。確認申請では2階建てになっているのに、何故か3階がノッカっている、とかね。

要するに、検査を受けられない事情があるわけです。

 

で、こうした検査済み証のない建物は、証明書がないので、適法か違法か既存不適格なのか、区別がつかないわけです。あ、ちなみに既存不適格というのは、当時の法律には合致していたけれど、法律が変わって現行の基準に合致しなくなったものをいいます。

なわけで、増改築をしようと思っても構造設計図書などがなければ、ほぼ不可能だったわけです。不可能というのは、役所が許可を出さない、ということ。検査済み証のない建物は、設計図書すらほとんど残ってないし。

 

今回のガイドラインは、こうした検査済み証のない建物でも、調査によって合法が確認できれば、増改築を可能とするもの。確認申請図書がない建物は、規模などに応じて復元構造計算書を作成して現状と照らし合わせるらしいのですが、そもそも、復元構造計算書ってどこまで信憑性あるん?安全側でみたとしても、現状がそれに合致するってことのほうが、珍しいでしょう。

 

法に適合しない建物の是正指導は、全て特定行政庁に委ねられているので、何とも言えないところはありますけれども、少なくとも今回の通達で、違反建築も救済する可能性があることは確かでしょうな。

 

既存ストックを活かすという考えは、今後の日本の建築業界において、避けて通れない課題です。しかしですな、何でもかんでも既存ストックと一括りにしてもどうかと思うわけです。

淘汰していくと、半分もなくなってしまうという、恐ろしい現実にぶつかるのかもしれませんけど、やっぱりね、ザル法規を助長しちゃマズイよ。

 

検査の実施が、あくまで建築主からの申請という、受け身検査になっていることもどうかと思いますが、まあ、そこまで行政サービス手が回らないんなら、検査済み証がないと登記できない仕組みとかにしたらどうなんでっしゃろ。

縦割り官僚の国じゃ、そういう議論さえ出てこないわな。