割の合わない住宅投資の終焉

 

建築・不動産業界の季節的な繁閑格差は、このところ多少減ってはきたものの、それでも1月から3月にかけての年度末は、バタバタと慌ただしい。

寒いのが超苦手のワタクシにとっては、この寒い時期は、家でジーーッと冬眠クマさんのように籠っていたいのだけれども、そうしていたらたぶん飢え死にしてしまうので、老体にむち打って出動する毎日でゴザイマス。

 

前回のエントリー

「Welcome back! 海外マネー 日本の不動産はお買い得?」

でも触れたように、このところの不動産市場の活況には目を見張るものがありまして、住宅市場におきましても、マンションの売れ行き絶好調、どこのデベさんもホクホクのようですな。

 

同時に中古市場もそれなりに動きが出ておりまして、今までは新築が好調のときは中古は低調という波があったのですが、徐々にストック市場の整備が整いつつあるという表れでしょうか。

ま、そうでもないと国交省その他識者の皆々様が、頭を突きつけて延々と議論を繰り返している苦労も、無駄骨ということになってしまいますから。

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国がそこまでストック市場に力を入れているのは、単に人口減少によって住宅が余ってきたからというわけではない。不動産業界を活性化することによる経済波及効果を狙っているのもあるけれど、我が国の住宅資産の低さにある。

 

国交省の資料によると、何と日本の住宅資産総額は、実際の投資額(住宅購入に費やした額)の半分しかない!

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                  資料:国土交通省

 

米国は、逆に上回っているというのに。。

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 資料:国土交通省

 

なんてこった!

 

つまりこういうことだ。

今までは、人生においてマイホームを手に入れることが「ゴール」であった。住宅とは「住み続けるもの」であり、財産として相続されはするが、マーケットにおいてその価値が評価されることは稀であった。

だから、戸建ては20年で価値はゼロというのは、実質的なマーケット評価価値でも何でもなく、単に税法上の法定耐用年数がそのまま、市場の価値になっているに過ぎない。

 

これじゃ、国の資産も溜まりませんわな。

誰だって、将来性のない資産に投資しようとは思わんでしょう。

確かに、住宅は他の金融商品とは違い、人が幸せな生活を送るための重要な役目を担っている。

しかし、だからこそ、人が幸せな人生を全うできるために、その資産性を維持し、且つ適正に評価されるべき仕組みが必要だと思うのであります。

 

だって、高齢になって子供も独立し、また夫婦二人の生活が戻ってきた時に、広い戸建てじゃメンテナンスも大変だし、マンションに移ろうか、なんて考えたとしても、家の価値ゼロじゃ、そうした自由もままならないってことになるわけですよ。

都心なら土地代だけで何とかなるやもしれませんがね。

 

ということで、国が数年前からストック市場の活性化を目指して検討を続けておりますけれども、既存住宅インスペクションガイドラインを出したのも、その一つ。

来年度活用開始予定の住宅履歴情報データベース「ストック」もその一つ。

そして今、長期優良リフォーム制度を新たに検討中。

これは、今ある長期優良住宅認定制度(新築を対象とした認定制度)を既存住宅のリフォーム工事にも適用できるものを作りましょう、ということ。

技術面、仕様面において、かなりハイレベルな設計基準が求められまして、ま、長期的に長く使えるものに改良してきましょう、という意気込みはよいのですけれど、税制面などのコストメリットないと、厳しいばかりでは普及しませんよね、というのは今ある長期優良住宅認定制度を見ての通り。

 

でも、ここまで全力投球なみの国の方針を見ておりますと、今の不動産市場の勢いに乗って、実需においても投資においても中古市場にBig waveがやってきそうでゴザイマス。