幻の空中都市

 

中国深圳。

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昨年9月、初めてその地を訪れたときは、日本の大都市と何ら変わりない姿に驚いた。

片側何車線あったか忘れたが、広い道路と、立ち並ぶビル群。

 

実は中国本土に足を踏み入れるのは、この時が初めてだった。

中国は、もはや新興国ではない、そう思った。

 

しかし、模倣天国中国の「なんでもアリ」気質は、建築にも及ぶのか。

いや、これは単に「あ、模倣、くすっ(笑)」の域ではない。

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「なんでもアリ」気質は、時に人命に危害を与える。

少し昔は毒餃子、メラミン入り粉ミルク、そして最近ではPM2・5。

たぶん、こんなのは氷山の一角だと確信する。

 

そして、今回摘発された海砂も。

 

完成すれば、中国一、世界第二位の高さとなるビルを含む、

複数のビル建設現場にて、脱塩処理がされていない海砂を使用したとして

工事中断となった。

 

コンクリートの骨材として使う砂は、川砂が基本。

なぜか。

 

少し専門的な話をすると、

鉄筋コンクリートの構造体の骨とも言える鉄筋は、空気に触れると錆びる。

これは空気中の二酸化炭素と化学反応を起こし、鉄が酸化することによる。

一方、コンクリートはアルカリ性。

コンクリート内部の鉄筋は、コンクリートのアルカリ成分によって、酸化から守られているわけだ。

 

ところが、塩分を含んだ骨材がコンクリート内に混ざると、コンクリートが中和される。

(コンクリートの中性化という。)

そうなると、鉄筋が錆びる。

錆びた鉄筋は、膨張してその体積を増し、次第にコンクリートが爆裂する。

 

こうしたメカニズムが進行すると、建物の寿命は長くない。

恐ろしいのは、それがコンクリート内部で進行し、そとから見えないところにある。

 

あれ?

どこかで聞いたフレーズ。

あ、ガンだね。

そうそう、人間の癌とそっくり。

 

今回、中国当局は工事を差し止めた。

見て見ぬふりをしなかっただけ、まだマシか。

でもこれは今に始まったことではない、と確信する。

 

中国沿岸部の華々しく発展してきた大都市。

短命に消えていく建築は、いかほどか。