スーパーヒーローになれなくとも

 

「スゴイですね」

初対面の人に、時々このように言われることがある。

あ、断っておくが、決して何かを自慢したいわけでも、ひけらかしたいわけでもない。

むしろ、その逆だ。

こう言われると、正直、チヂこまって道ばたにうずくまりたい気持ちになる。

 

ワタクシ、興味半ば建築を学び、そのまま建築の世界に入り、未だにそれを生業としておりますが、お世辞にも高い志をもってコツコツやってきたとも言えず、どちらかといえば、のらりくらり、その場しのぎ、といいますか、まあ食べていくためには仕事せんといかんよね、みたいな、ていたらくぶりでゴザイマス。

 

他人から見ると、学校を卒業してから建築一筋の建築士・・すげぇ~、ってなるのかもしれませんけど、確かにね、ホント立派な方、多くいらっしゃいます。が、既述のように、ワタクシはのらりくらりタイプでして、その足下にも及ばないんでござるよ。

 

たぶん、「スゴイですね」と言われる方々は、ワタクシが建築士ということで、前者のようなイメージをお持ちになっているのだと思います。

が・・・実に「いと、かたはらいたし」。

 

「これから、大地震がくるかもしれないし、日本だけでなく世界中、地震やら災害やらで、建築における耐震、防災という面では、必要性の高いスキルですよね」

あー、そうか、他人からみると、建築士ってそういうイメージなんだ、と気づく。

シャキッとして、的確な判断をテキパキと出す。

ココはこう、これはマズいからこうした方がいい、その場合はこっちの方法で。。。まるでスーパーヒーローのごとく。

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ただ、実際は、そんなヒーローでも何でもない。

繰り返すが、確かに、立派なホントにスゴイ人いらっしゃいます。

けど多くは、迷い、実に不安定な不確かさの中で、手探りしながら「たぶん」こっちの方向で正しいんだろう、的な感じで、判断していることの方が、圧倒的だと思うのです。少なくともワタクシはそうです。

 

もちろん、建物を作る上での、法律であったり、ルールは守らなければなりませんょ。

それは最低限のルールです。

あ、ちなみに、最も基本となる「建築基準法」ですがね、これ、建築物の「最低基準」を定めたものであって、これをクリアしているからといって万全ってわけではない。(←これ、意外と知らない人多いみたい)

 

「工学的見地からすると・・・」

とある構造設計者さんが、発した言葉だったのですが、うまい表現だな、と感心したことがあります。

要するに、さまざまな経験則、事例などを勘案して考慮された結果、という意味なのですが、結局、計算式のような形式に当てはめて説明できないようなことは、「経験則上から判断して」より有効であると思われる手法を選ぶ、ということ。1+1=2、というきっかりとした答えは出なくとも、Around 2 でいける、みたいな。

 

思うに、建築の世界って、技術や理論がモノを言う世界でありながら、実際は、とってもフワフワした不安定なクッションの上に座っているようなものじゃないかと。

それは、ダイレクトに自然と直面しているということ、その人間の力では抗えない影響をダイレクトに受けるということ。更に言えば、人間の感情によっても、いとも容易く破壊されてしまうということ。

 

どんなに技術が発達しようとも、地球を相手にした自然の力は、我々人間がコントロールできるものではない。人の感情も然り。

哀しきかな、自然の力や人間の愚かな感情の前には、どんな「スゴイ」スキルも無力である。

無力だと知りながら、それでも歩み続けるのは、フワフワした不安定な中にも、より希望の持てる可能性があると信じるからに他ならない。

 

というわけで、これからも、のらりくらりでマイリマス。。(って、オチはそこか!)