プロフェショナルと日当労働の狭間

 

「スウェーデンハウス」というハウスメーカーがある。

名前の通り、北欧の住宅をモデルとして、天然木を使用し、自然の風合いを大切にしながら、高気密・高断熱といった性能の高い住宅づくりを目指すハウスメーカー。

あ、いえ、このメーカーの宣伝をするつもりはないのですけど、先般、どこかの記事で見かけたのですけど、ここのメーカーが、熟練工を育てるために、スウェーデンから技術者を招いて教育を行っているという話が、紹介されていました。

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スウェーデンに限らず、ヨーロッパでは、日本でいう、いわゆる「職人さん」という職業は、日本のそれよりも遥かに、地位が高い。

職業に地位の高低を付けること自体、そもそもおかしい話ですが、それでも、一般的に高給であればあるほど、また、肉体労働のブルーカラーに対し、頭を使うホワイトカラーの職種は、地位が高いと見られている。

 

ドイツが発祥とされるマイスター制度は、職人の資格制度で、一定の訓練と実務を経て、マイスター試験に合格すると取得できる。建築業だけに限らず、様々な手工業の業種についてこの制度が適用され、資格取得者は自身で開業できたり、訓練生を採用して教育することもできる。

 

スウェーデンにおいても、このマイスター制度があって、ほとんどの職人はマイスターを取得しているらしい。マイスターを持っていることで、一定の技能を有することが社会的に認められ、職能としても高く評価されるという。

そして、彼らは正社員として雇用され、安定した給料を得て、仕事をしている。

しかも、その平均月給は日本円にして「500万円」。ま、スウェーデンの物価の高さはありますけど。

 

日本においても、似たような制度はあって、一応国家検定として技能検定に合格した者を「技能士」として称するが、医師や弁護士、建築士などに比べると、あまり知れ渡っていない。

 

建築業の職業離れ。

もう、死語かも知れませんけど、3Kって言われてましたね、「キツイ、キタナイ、キケン」。

それでも、若年層は3Kが故に建築業を離れていったのではない、と思うのであります。

職業に、地位の高低はないけれど、それでも社会的にその技能を認められ、「正当に評価」されることで、自らの職業に誇りがもてる、というのは一理ある。

この、「正当に評価」されることが大事なところで、実際のところ日本の職人さんは、ほぼ日雇いの日当給。仕事がなければ、干上がってしまう。

日当給ゆえに、その日の持ち前を終えれば、あとのことは知らんよ、となってしまう。そりゃ、そうだ。

日当給であれば、住宅ローンを借りることもできず、住宅をつくる人間が、自分の家を持つことすらできない、という何とも皮肉な現実が今の日本。

 

「プロフェッショナル」とは、その職に精通した人を指すことが多いが、どんな状況であっても自らの職能を全うできるのが本当のプロである。

が、プロも生身の人間であることに違いはなく、彼らの生活基盤が安定してこそ職能が維持できるのではなかろうか、と。

スウェーデンと日本の違いから、そう感じた次第でゴザイマス。